今年度は、イギリス(連合王国)福祉改革の影響に関する研究を中心に行い、日本の福祉改革については昨年度と引き続く検討を行った。 イギリス研究では、1998年の福祉改革がひとり親世帯の労働と福祉に与えた影響について、New Deal for Lone Parentプログラムの実践・実行プロセスに注目した現地調査と資料収集を行った。政策立案とその評価については、プログラムの担当機関である労働年金省と教育技能省において、政策文書及び影響調査研究資料を収集し、政策担当者・研究者に対する聞き取りを行った。また、プログラムの執行機関としてJobcentre Plus、Sure Startを訪問し、福祉受給者に対する就職相談・職業訓練等のプロセスについて、ケースワークの方法、就労支援・教育プログラムの内容、保育サービスの紹介、人的資源の配置等、現場レベルの具体的な課題を検討した。さらに、それらの福祉改革がひとり親当事者にいかに受け止められているかを探るため、当事者グループ・アドボカシー団体(Gingerbread、Child Poverty Action Group、National Council for One Parent Families)を訪問して意見交換を行うとともに、関連資料を収集した。これらの調査研究から、ひとり親世帯のNew Dealプログラムへの参加はあくまで任意であること、任意であるがゆえに一定の就業支援策の効果がみられること、保育サービスの利用可能性が政策効果に影響を与えること等についての知見を得た。また昨年度の研究と同様、公的扶助(Income Support)以外の税・社会保障プログラム(Child Benefit、Housing Benefit、Working Tax Credit、Child Tax Credit等)の重要性を確認した。 日本の動向については、改正母子寡婦福祉法にもとづく就業支援・子育て支援プログラムの実施状況等について昨年度から引き続く検討をおこない、その内容の一部は、厚生労働省主催・第32回市町村セミナー「総合的な母子家庭等対策について」(平成15年7月17日)で講演した。
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