平成14年度は、平成16年度までの研究期間の初年度に当たるため、わが国の公共工事発注制度の効率性に関する予備的な調査と研究を行った。 まず、わが国において行われている公共工事発注制度の現状についてヒアリング調査するとともに、ドイツ連邦共和国に調査に赴き、ドイツ連邦およびEUにおける公共工事発注制度の概要を調査した。その結果、日本の公共工事の発注制度は明治政府が欧州諸国の制度にならって導入したにもかかわらず、その後の歴史的な経緯の中で日本の制度と欧米の制度の中に大きな相違点が発生したことが確認された。そのような相違がどのような歴史的な背景と根拠の下に発生したのか、効率性の観点からどのような評価がなされるのかを検討することは次年度以降の課題であろう。 今年度は、このような制度的な相違点の調査と平行して、建設産業に関して産業組織論の立場から基礎的な計量経済学的な分析を行った。その結果、建設産業は製造業と比べて、生産性、価格、特許取得などの点で効率性が低いことが明らかになった。また、経営者への動機付けという観点でも、建設業のように公務員からの天下りの役員が多い企業では、報酬を通じた動機付けが十分になされていないことが明らかにされた。また、経済環境の変化にもかかわらず、合併・買収などの組織の再編が進まないのも現行の入札制度に問題があり、それが産業の効率性を低下させている可能性があることも示された。これらの成果をふまえて、来年度以降はより詳細な分析を行う予定である。 これらの得られた結果は投稿中あるいは投稿準備中であり、来年度以降に公表される予定である。
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