平成14年度はロシア企業のリストラクチュアリングについて研究した。不採算企業の割合が4割を占めるロシアでは、破産事件数も毎年増加を続け、破産をつうじた企業の再編が進行している。 企業破産の個別事例を検討すると、次のような二つのタイプが多い。一つは「所有権の交替」と呼ばれるもので、所有権獲得の安易な手段として企業が破産に追い込まれる。潜在的に魅力のある石油関連企業が故意に破産に追い込まれ、生産停止を経験するといったスキャンダルも多い。もう一つは負債を抱えた企業が、子会社に資産を移転して存続を図る方法の利用である。法律によって、子会社は破産した親企業の負債の返済義務を負わない。この方法は、雇用維持のために企業の存続を望む地方政府によっても支持されている。 2002年夏に行った、連邦破産局(破産手続の監督機関であり、所有者としての国家の代表機関)や破産管財人、破産法作成に従事した専門家へのインタビューによっても、上記の特徴は確認された。しかし、このような企業破産は、不採算企業の真のリストラクチュアリングには繋がらない。 ロシアでも破産事件数やスキャンダルの増加によってこの問題への関心が高まり、2002年秋には新破産法が制定された。管財人資格の変更や、戦略的企業、燃料・エネルギー部門の企業の規定などで重要な変更がなされた。新法によって、完全ではないが、上記の問題の改善も期待される。平成15年度は、その効果を見るとともに、政府の産業構造調整政策に研究の力点を移す予定である。
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