本年度は主に婚姻状態の多様化と就業行動に関して研究を進めた。まず、横山(2005)で、再就職者や転職者といった新規就職者に焦点を当て、20代、30代の女性を中心に既婚女性だけではなく未婚女性や離婚女性についてもその就業行動における特性を明らかにしようと試みた。その結果、女性の労働供給行動は、配偶者の有無や子どもの有無によって大きく左右されることが確認された。また、会社を辞める理由や就職する際に会社を選ぶ理由も、家族構成によって異なることがわかった。さらに、同じ婚姻状態の新規就職者であっても、ライフ・ステージや家計状況によって異なった就業行動をとることが確認された。なお、従来の就業「状態」に関する分析では、親との同居は正規社員としての就業を促進するが、本研究のように「新規」就業に限定した場合には、親と同居するとむしろパートになる確率が上がることが確認された。就業を継続している家族の同居の親と、一度仕事を辞め、転職・再就職する家族にとっての同居の親とでは、その同居の持つ効果・役割(老親介護や孫の世話)が異なる可能性が示唆される。 次に、横山(2006)においては既婚女性の就業行動に焦点をあてた。「夫婦に関する考え方」という夫婦のあり方に関するアンケート調査項目を用いて、就業に対する選好因子を抽出し、選好の異質性が就業行動に対してどのような影響を及ぼすかについて分析を行った。その結果、夫婦のあり方に関する意識と就業行動に関する意識は強く結びついており、それが就業行動にも有意な影響を及ぼす、また、その影響の大きさはライフ・ステージによつて異なることが明らかとなった。
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