平成14年度は、研究期間の初年度に当たり、主に地域労働市場の問題を考えていく上で必要な文献、データ、ソフトウェアの収集・整備を行った。 平成14年度の研究から得られた主な知見は次の通りである。 第一に、地域労働市場と全国の労働市場との関連を考察した。失業率がそれ以前の時期に見られない水準で上昇している1990年代以降の時期には、地域間の失業率の格差は縮小している。バブル期以降の失業率上昇の局面に関しては、どの地域においても雇用促進政策の重要性は一層増している。 第二に、バブル期以降には、15歳から24歳といった若年者層の失業率上昇の問題が特に大都市地域では大きくなっている。地域固有の経済的なショックではなく、全国経済に影響を与えるようなショックが起きた場合に、各地域のどのような年齢層の失業率が大きく影響を受けるのかを考察した。四半期ごとの地域年齢別失業率のデータを用いて考察を行った結果、1986年から1991年までの期間と、1997年から2002年までの期間を比較すると、構造変化が認められ、後者の期間には全国失業率が上昇した時に15-24歳という若年者層の地域失業率に与える影響が大きくなっていることがわかった。 第三に、地域の産業の生産増加により、地域就業者数と地域雇用がどの程度増えるのかという推計を産業連関分析によって行った。1990年代以降、多く見られるように、生産に携わっている雇用者の水準が過剰で調整局面にある場合には、生産が増加しても雇用増加には結びつきにくいという問題を推計の上で考慮する必要がある。地域産業へのニーズを呼び起こすような地域経済の発展を遂げることは、地域雇用を拡充してゆく上でも肝要であり、域内他産業への産業連関的な影響によって地域経済に与える影響が大きいということがわかる。
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