平成14年度の研究目標は、実証分析のためのデータ・資料を収集、整理することと、本研究の趣旨に沿ったサービス貿易の理論を構築することであった。 データ・資料の収集、整理の成果として、平成14年11月18日に国際東アジア研究センターにて、"Trade Liberalization in services and productivity growth in Singapore"を発表した。この論文では、日本・シンガポール間の自由貿易協定によるシンガポールのサービス産業の自由化が同国の労働生産性と全要素生産性に与える影響を、シンガポールのデータを用いて説明した。 理論構築の成果としては、平成15年3月16日に、55th International Atlantic Economic Conferenceにて、"Preferential Trade Agreement in Services and Its impact on Welfare"を発表した。この論文では、不完全競争的サービス市場のモデルを構築し、自由貿易協定によってパートナー国のサービス供給者に優先的な国内市場アクセスを認めることによる、自由貿易地域内外の厚生効果を調べた。また、自由貿易協定のパートナー国から国内に進出するサービス企業が、国内の独占企業との結託あるいは競争を選択する誘因を調べた。この論文は、平成15年5月中にワーキング・ペーパーとして発表し、6月中にInternational Atlantic Economic Societyの学術誌に投稿する予定である。
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