研究概要 |
平成15年度は、まず、日本の対東アジア貿易における決済通貨選択行動に関する論文をAsian Economic Journalに掲載した。同論文は、輸出企業の市場別価格設定行動(PTM行動)と決済通貨選択行動の関係についての理論研究に依拠しながら、1988年から2000年までのHS9桁分類の日本の貿易統計を用いて、日本の対米、対東アジア輸出のパス・スルー率を品目別に計測しており、先行研究よりも多くの輸出品目を用いて共和分検定と誤差修正モデルによる実証分析を行っている点が特徴である。先行研究の分析結果とは異なり、ICや半導体に代表されるエレクトロニクス製品では、対東アジア輸出であっても日本の輸出企業が米ドル建て取引を行って、米ドル建て輸出価格の安定化を図っていることを明らかにした。次いで、最適通貨圏の基準の一つである、金融市場の統合度に関する研究を行った。本研究では、東アジア・太平洋諸国(9カ国・地域)が米国および日本とどの程度実質金利の連関を強めているかを分析しており、Time-Varying Parameterモデルを用いて実質金利の連関が時間を通じてどのように変化してきたかを分析している点が特徴である。先行研究とは異なり、東アジア諸国の一部で1980年代後半から日本との連関が弱まっていること、多くの諸国は依然として米国との連関が相対的に強いことが確認された。本論文は、平成15年7月にオーストラリアで開催されたModelling and Simulation Societyの国際大会で報告し、同学会のレフリー制のProceedingsに掲載された。現在、同論文の更なる改訂を進めており、平成16年6月末からカナダで開催される国際学会(WEAI,79th Annual Conference)で改訂論文の報告を行うことが決定している。また、学会報告後、レフリー制の学術誌に投稿する予定である。
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