本研究では2つの目標を掲げている。その第一は、グローバル経済下における政策課税の役割を探ることである。政策課税には、環境税、国際通貨取引税(トービン税)、累進所得税などが含まれる。第二の目標は、EU財政における構造基金を調査・研究し、それが地域間格差の縮小に対して果たしている役割を明らかにすることである。 2002年度は、上記両方の点において前進を図ることができた。まず第一点目だが、以前から進めてきた環境税研究をさらに進展させ、近年都道府県で活発にその導入が行われている地方環境税の理論的根拠や制度設計のあり方について産業廃棄物税、あるいは炭素税を念頭に置きながら明らかにした。03年度は既に導入されている都道府県での実態調査を踏まえた研究を進める予定である。また、まだ実現されていないが関心の高まっているトービン税についても研究の進展を図ることができた(研究発表参照)。国境の壁を容易に突き抜けてグローバルに動き回る金融の不安定性をどのように抑えて実体経済の発展を促すかという点は、経済政策上の大きな課題である。本研究では既存のトービン税研究を展望するとともに、租税としてどのように位置づけ、制度設計すべきかを明らかにした。その際に「グローバル課税」のメリットと限界についても触れておいた。 第二点目については、欧州における構造基金の現地調査を行った。欧州委員会、地方政府、そして構造基金の研究者を訪問し、主として構造基金がこれまでのスタイルを脱却してどのような新しい方向性に進もうとしているのかを中心に調査を行った。その結果、構造基金は単なる地域間再分配の手段から脱却して地域の経済的自立性が確立されるのを促す触媒としての役割を担うべく転換を模索中だということが分かった。それに応じて、政府の役割も直接的な援勘の主体から調整者としての役割をより強めていくことになりそうである。この調査結果に基づいて、03年度は論文をまとめる予定である。
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