この研究では、高齢化社会に向けて最適な医療貯蓄会計を導入することを目標としている。その目的のために平成14年度では、理論分析と実証分析の両方を行った。理論分析の方では、最適な医療保険を設計するときの本質である動学的かつモラルハザードが存在する経済で効率的な資源配分と所得再分配をおこなう制度の定性的な性質を研究した。その結果あきらかになったことは、動学的かつモラルハザードが存在しかつ政府が累進所得税などの非線形の所得税をつかうことができる場合、一般消費税を導入することによって経済の効率性を上げることができるということである。 これは、直感的には累進所得税などの非線形の所得再分配が行われている場合、モラルハザードの存在によって効率的な投資が阻害されることにからと理解することができる。この結果は英語で論文にされ現在Journl of Public Economic Theory誌に投稿中である。 実証分析の方では、最適な医療保険制度の設計に必要不可欠な医療への支出行動がどのていど個人が民間保険に入っているかに依存するかを分析した。問題は個人が民間保険に入るかどうかは内生変数であり、これを無視して実証研究の推定を行った場合、推定値はバイアスがかかるという事である。これを取り除くためにいくつかの操作変数を考え、それをもとに推定を行った。ただし現在のところこの推定値の標準偏差の値が大きくさらなる改善が必要と思われる。
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