本年度の研究実績 本研究の目的の一つは、銀行監督者(銀行を監督または規制する業務を政府部門で担当している官僚)が社会厚生だけでなく自己の名声を重視する場合に、銀行規制に非効率性が生じることを理論的に示すことである。本年度は、銀行監督者が自己の名声を重視している場合、銀行業に対する監督・指導が過剰になることを、銀行閉鎖政策(銀行の閉鎖・存続に関する意思決定)との関連から考察した。 考察から得られた結論は、以下の通りである。 1.銀行監督者が名声を重視している場合、既存研究のように、破綻した銀行の存続を認めるような意思決定が行われる可能性が高くなる。それは、銀行監督者が名声からの私的利益を守ろうとして、銀行の閉鎖に消極的になるからである。 2.銀行監督者が銀行の閉鎖に消極的になるときには、社会厚生を最大にする水準を上回るほど厳しくなるという意味で、銀行監督は過剰になる。それは、厳しくすることが銀行監督者の私的利益を高めるからではなく、将来破綻銀行を存続させることで多大なコストが発生するために、銀行が破綻する可能性を引き下げようとして厳しく監督しようとするからである。 3.適切な銀行監督を行うためには、破綻銀行を存続させようとする銀行閉鎖政策の歪みを解消しなければならない。そのためには、早期是正措置といった規制手段や天下りの禁止等の人事制度の改革も必要になる。 なお、最終的には、「銀行閉鎖政策と銀行監督(仮題)」として投稿する予定である。
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