本研究の目的は、規制主体側の要因により、銀行規制が非効率になること.(具体的には、規制が過剰になること)を示し、預金市場の市場規律によりその非効率性を解消できるかどうかを考察することである。 本年度は、前年度に引き続き、銀行監督者(銀行を監督する業務を政府部門で担当している官僚)が社会厚生だけでなく自己の名声からの私的利益を重視する場合に、銀行監督や規制が過剰になることを、銀行閉鎖政策(銀行の閉鎖・存続に関する意思決定)との関連から考察した。支払不能状態にある銀行を閉鎖することに銀行監督者が消極的になると、銀行の破綻を防止し社会的コストの発生を回避しようとして、銀行監督の努力水準は引き上げられ、最善の閉鎖政策のときよりも高くなることが導かれた。戦後日本の銀行規制に対しても、破綻処理制度や預金保険制度を整備することに大蔵省が消極的であったために、整備されていたときよりも多くの資源が投入されたという意味で、銀行規制が過剰になった可能性を指摘できる。なお、研究成果は、「銀行閉鎖政策の失敗と過剰な銀行監督」という題名で論文にまとめ・日本金融学会の学会誌『金融経済研究』に投稿した。現在審査中である。 また、預金市場の市場規律により銀行規制の非効率性が解消できるかどうかを分析するためには、預金契約の二つの特徴である「流動性供給機能」と「規律付け機能」が両立するかどうかを分析することから始める腰がある。本年度は、預金契約の機能について分析した既存研究を整理した。
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