本年度は、研究計画の(1)先行論文等の整理、(2)問題点の整理を行ったうえで、実証研究に取り掛かった。対象とした企業は、NEEDS業種分類の中分類「電気機器」に該当する316社である。期間は1980年から1999年までの20年間である。負債のキャパシティを測る変数(従属変数)として、負債比率(=負債/資産)、長期借入比率(=長期借入/資産)、担保付借入比率(=担保付借入/資産)の3つを選択した。また、それに影響を与える説明変数としては、土地保有比率(土地その他/資産)を選択した。その結果、土地保有比率は負債比率に対して有意に負の影響を与えていた。これはShleifer-Vishny(1992)の資産の流動性が高いほど負債比率が高いという仮説に反する結果であり、流動性が高いほど経営者が債権者の利益に反する行動をとることができるために、負債比率が低くなるというMyers-Rajan(1998)の仮説を支持する結果である。しかしながら、もちろんこれは試験的な結果であり、より詳細な方法に基づいた分析が必要である。そこで、土地保有と密接な関係があると考えられる長期借入比率と担保付借入比率を従属変数として、再度回帰分析を行ったところ、土地保有比率は両者に対しては有意に正の影響を与えていた。これは、土地のもつ担保としての役割が正の影響を与えているものであると考えられる。来年度は、こうした点から更に研究を進めていく予定である。
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