本年は研究計画最終年度となるため、データの追加購入に加え、昨年度検証結果の修正、信用金庫の合併が中小企業の資金調達行動に与える影響について検証し、さらに先行研究のサーベイを行った。昨年度の検証の修正を含め、現状得られた結果は以下の通りである。 <破綻について> (1)破綻により中小企業の借入金が減少した。取引順位が高いほど影響が大きい。 (2)銀行借入に窮した場合、企業は、銀行借入以外の方法、例えば企業間信用等で資金繰りをしていた。 (3)1998年には特別信用保証枠が借入金の減少を補っていたと考えられる。 (4)破綻後、譲渡先金融機関と取引が継続している企業数は、信金信組のケース、地銀のケースとも破綻前の約半数であった。地銀のケースでは、譲渡先金融機関と取引がなくなると、企業の借入が困難になっていた。一方、信金信組のケースでは、取引継続の場合には借入額は減少し、取引のない企業の借入額はむしろ増加していた。 (5)地銀の業況が悪化すると、企業は取引金融機関数を増やす可能性があった。しかし、信金信組のケースでは企業が取引金融機関数を増やすという可能性は見出せなかった。 (6)調達コスト(利払率)についても検討したが、破綻によるマイナスの影響は確認できなかった。 <合併について> (8)合併吸収した信金は、取引順位が高いほど借入額が増大し、順位が低いほど減少し、4位以下ではむしろ0とは有意に減少していた。一方、合併吸収された信金の取引順位が低いほど借入額が増大した。 (9)吸収した信金と取引のある企業、ならびに吸収された信金の企業の利払率は、少なくとも合併により、以前より増加する傾向にあった。唯一の例外は、吸収された信金と取引順位が1位で取引していた企業の利払率が1%有意水準で負値となり、利払率が減少していた。
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