本研究は小売業者の値引きによって決まる需要変化をモデル化し、小売業者の利益を高める値引き最適化手法を開発するものである。 需要変化のモデル化のためには、需要の変化が値引き実施のタイミングや消費者特性によりどのように変化するのかを分析し、これをもとに消費者異質性を考慮した需要発生モデルを構築する必要がある。 本年度はまず、消費者の価格変化に対する反応が時間と共にどのように変化するのかを分析した。消費者の価格感度やブランド選好が時間とともに変化する様子を消費者の購買履歴データをもとに分析を行った。この研究の結果からは、消費者の価格感度やブランド選好は1年間ほどの期間ではほとんど変化しないこと等がわかった。 これらの結果をふまえて、小売店舗での価格設定問題について定式化を行った。最初にパーソナル・コンピュータのように新製品が定期的に登場し、既存製品が陳腐化していく商品分類について取り上げた。このような商品分類では価格が時間とともに低下していく傾向が見られる。これらの現象を説明するモデルを構築した。モデル構築において消費者の視点と小売業者の視点を考えた。消費者の視点からはブランドの魅力、次期新製品販売の発売日、既存商品値引きの予測、留保価格等を考慮し、小売業の視点からは競合環境、商品の在庫を考慮する。 理論モデルの最適政策の発見と現実のデータを用いた最適政策の効果の予測、および他の商品分類におけるモデル化と適用が今後の課題となっている。
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