研究概要 |
今回の研究の目的は,データサイエンスの手法をマーケティング学問領域に応用し,人間の頭脳が処理不可能な大量データから,マーケットにおける顧客価値に関する精度の高い仮説モデルを導きだすことをとおして,企業のマーケティング活動に有用なマーケットの行為主体の行動モデルを導出することである。具体的には,マーケットに生起する諸現象に関する大規模なデータ収集からスタートして,収集されたデータから,マネジメントが意思決定するにあたって有用と考えられるコンテンツの抽出と,加工に必要な共通知識の体系的な蓄積をおこなってきた。サーベイ調査の結果から,消費者行動や事業者行動を規定するいくつかの価値の組合せが存在することが明らかとなった。こうした特定のマーケットで生起する行為主体の行動モデルは,企業のマーケティング活動に有効に活用することができる。すなわち,企業は,事業展開にあたって特定のオファーのターゲットとして理想の顧客を定めた基準を設ける。つぎに,データベースのなかから自らの基準に適合する情報を選びだし,それを活用することをとおして理想のタイプにもっとも近いターゲットを選定することができる。さらに,企業はマーケットからのレスポンスを組織全体で情報共有することによって,独自のデータベースを構築していくことができる。結果として,データベースの情報で武装され,かつ,その情報を組織内で共有する仕組みを有した企業は,マスマーケティング,セグメントマーケティング,ニッチマーケティングをおこなう場合よりも,自らにとってのターゲットマーケットをはるかに正確に絞りこむことが可能となり,そのビジネスをより有利に展開していくことができるようになる。
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