今年度は東アジア全体の製造業で、どのような変化が置きつつあるのか、日本はそのなかでどのようなポジションをとってゆくのかといったことについて、国内と海外のフィールド調査を積み重ねてきた。 夏休みを利用して長期の中国での研究調査を行い、日系企業を40社程度訪問し、現地の状況と今後の展望を取材した。東アジアのなかで中国のプレゼンスが高まり、市場としての重要性を増すなか、取材からは日系企業が、市場戦略、技術移転、人材の問題などを含めて、現状よりもいっそうの経営現地化を進める必要があり、中国のローカル企業と補完的な関係をつくってゆく必要があることが示唆された。 現地調査に加えて、時間のあるごとに国内の事業所や産地の取材も続けてきたが、中国を中心とする東アジアの台頭が顕著となるなか、国内の多くの事業所が苦戦を強いられており、事業転換に成功したところと、そうでないところの差がはっきりと出てきている.産地のなかでも、国際分業を視野に入れつつ事業の掴みを伸ばしている企業を中心に産地が再編される様子が観察された。また空洞化に対処するために、地域では水平型の企業ネットワークによる受注促進や共同開発などの動きが出てきている。 そこで、内外のフィールド調査から得られた結果をもとにして、中国を中心とする東アジア地域における構造再編の流れのなかで、日本の企業や、企業の集合体としての産業集積がいかなる変懇を遂げるのか、また日本企業の存立が今後も維持され、東アジアの経済成長のなかで、ビジネスを拡大できる余地があるとすれば、どのような条件のもとで、そうした成長戦略が可能になるのかといった諸点を整理し、論文にまとめた。
|