本研究は現在多く出現しているバイオベンチャーに関して、いかなる要因がその存続を可能にするのかを問題意識としている。2002〜2003の研究実績に関して触れたい点は以下の2点である。 ひとつは、バイオベンチャーの経営者とのインタビューを通じて、分析対象を明確に設定する必要性(適切なサンプルの確保)を認識したことである。ひとことでバイオベンチャーと言っても、IT、医療、環境、電子、化学、農業のように産業横断的な性質を有する。同時に、同一産業内においてもビジネスモデルが明確に異なる状況にある。例えば、医療分野に目を向ければ、創薬、再生医療、機器、研究支援など対象とする事業によって、キャッシュフロー、顧客、研究開発期間など経営戦略を策定・実行する上で重要となる要素が決定的に異なってくる。今後2003〜2004年においては、医療関係のバイオベンチャーに質問表を配布し、ビジネスモデルの差(事業領域の差)をコントロールして分析する予定である。 もうひとつは、組織間関係の重要性である。たとえ事業化に成功し企業を立ち上げても、長期間生存するためには製品や特許などの知的財産を継続的に収益に結びつけたり、出資企業から出資の継続を確保することが重要である。特に顧客や出資先を企業に設定している場合が多いバイオベンチャーにおいては、事業相手との関係性が重要になると考えている。この関係性が生まれる契機を考察するため、技術資源をキーワードに「企業組織が技術資源の獲得形態を決定する要因」を早稲田大学大学院商学研究科紀要に提出した。今後2003〜2004年においては、質問票によってバイオベンチャーと企業との組織間関係を調査する予定である。
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