研究概要 |
昨年度行った調査において台湾金型メーカーでは,日本で製作経験のある金型の構造をパターン化(データーベース化)することで,3次元ソリッドCADを活用した「設計の標準化(スキルレス化)」を進め,精度が出ない部分は仕上工程の人海戦術で対応し完成させていた。このような方法は,「技術面,コスト面から見た国際分業の観点」からも中国で行った方がより効果が得られると考え,本年度は,中国最大の家電メーカーであるハイアール社の内製プラスチック金型工場において金型製作の分業方法,設備,人員配置と経験年数,管理方法,従業員の賃金について調査を行った。 特に強調しておくべき点は,3次元ソリッドCADのメリットのみを最大限活用し,最終工程において金型を修正する11のブースがあり,ここではトンガン,シンセンの日系金型メーカーで数年以上のキャリアを積んだ作業者が年俸1〜2万元という高給で雇用されており,台湾以上にシステマチックな後工程による「尻ぬぐい」方式の金型製作が行われていた点である。 また,海外工場での技術指導の問題点については,中国の大手家電メーカーの内製金型部門において指導を行っていた日本人技術者から匿名を条件に,現地での技術指導の方法およびスキルに対する考え方や技術修得の問題点について3度のヒアリング調査を行い,詳細な説明およびデータの提供を受け,現地における技術,スキル移転の考え方の日本との相違を再認識した。 残された課題としては,3次元ソリッドCADが普及した最近10年弱の期間における金型製作の変遷を調査するだけでなく,日本において本格的な金型製作が始まったと考えられる戦後からの変遷の中で捉えることが重要ではないかと考え,平成16年度の研究実施計画に盛り込みたいと考えている。
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