平成14年度は主として(1)「各国の会計制度の比較分析」と(2)「ヒアリング調査」、(3)「実証モデルの構築」を研究の中心に据えた.(1)の年金会計基準についていえば、各国の会計基準ごとの歴史的展開(米国基準・英国基準・国際会計基準)、その必然性と偶然性をしつかりとおさえる作業が必要不可欠である。そのために、どのようなプロセスを経て企業年金会計基準が設定されるに至ったのかについて、国ごとに基準を分析した。また、それに対応した会計理論的な研究の分析も行った。特に年金会計に特有の問題、年金資産・年金負債の認識・測定・開示の問題について検討した。わが国では、2001年3月期から、新しい退職給付会計基準が施行されたが、おおむね国外会計基準に対応した内容になっている。また、それに対応して、会計データの入手も可能になり、次年度以降の分析に役立つことが判明している。 (2)のヒアリング調査は、年金会計基準が企業財務にどのような影響を与えるのかを調べるために実施した.規模や業種を考慮して、10の年金基金を対象としてヒアリング調査を実施した。その成果として、『年金と経済』2003年2月号に、「厚生年金基金の意思決定に関する「事例研究」」という論文を公表した。 (3)の実証モデルについては、Ohlsonモデルをはじめとした、「Value relevanceモデル」を検討した。来年度以降は、残余利益モデル、対数線形回帰モデルなど、複数のモデルを取り上げて、実証段階へとスムーズに移行していく予定である.
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