研究概要 |
本研究ではNPMの導入により必要となる,もしくはNPMの導入を支援する意思決定支援情報に関する研究を行った。とりわけ,社会資本整備とそれによる公共サービス提供の手法としてのPFI事業における投資意思決定支援情報に関して,VFM (value For Money)の実現に向けた官民双方の連携によるライフサイクル全般にわたる適切なコスト・マネジメント・システムのあり方について研究を進めた。その結果,公的機関特有のコスト構造を前提としたコスト・マネジメント・システムの構築を図る必要があることがわかった。例えば,社会資本整備を伴う公共サービス提供事業については,その実施に関する意思決定によって生じるコストの大半が固定資産・インフラ資産の減価償却費及び正規職員の人件費といったいわゆるコミッテッド・キャパシティ・コストであり,キャパシティ選択がコスト構造の硬直化に及ぼす影響は民間企業に比して著しく長い。したがって,これら事業においては,キャパシティの選択とその柔軟性の確保によるキャパシティ管理の2点を重視したコスト・マネジメント・システムの設計が不可欠であると結論付けた。 さらに,本研究では,PF1手法の導入が公的機関における業績管理(マネジメント・コントロール)の改革に与える効果について分析を行った。これについては,平成15年12月に産官学のPF1専門家を集め,『PFIフォーラム-PFIの現状と今後の課題-』と題するシンポジウムを開催し,その中で,「PFIによるマネジメント・コントロール」と題し,研究報告を行った。具体的には,NPMの展開にあたっては,「インプット重視・単年度思考」に基づくマネジメント・コントロールから,「成果重視・長期思考」に基づくマネジメント・コントロールへの移行が不可欠であり,社会資本整備を伴う公共サービス提供事業をPFI事業として実施することによって,これら事業を自律した責任中心点として「成果重視・長期思考」に基づくマネジメント・コントロールを実践することができると結論付けた。
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