1.研究開発活動の多くを占める「不確実性の高い仕事」に効果的といわれてきた内発的動機付けの高さと業績との関係、業績評価システムや報酬システムの設計・運用上の各要因と内発的動機付けとの関係を、会計学の知識に加え、心理学、研究開発管理、リーダーシップ論の文献を用いて詳細に考察してきた成果をまとめた。しばしば言われる「金銭的報酬の内発的動機付けに対するマイナス効果」は必ずしも妥当でない点、自己による目標設定、タスク遂行、業績評価が必ずしも動機付けや業績にプラスではない点、既存の研究は短期的な効果のみ見ており今後長期的効果をみていく必要がある点を述べた。 2.企業・事業戦略と研究開発活動の方向性の一致を確保するための管理会計システムを考察した。昨年度は、主に会計領域内の研究レビューにより、中核技術の開発やそれを用いた製品開発を促進するために、どのようにバランスト・スコアカード(全社レベル・事業部レベル・研究所レベル)を作成すべきか、本社研究開発費の各事業部への配分はどのように行うべきかについて考察を行った。しかし、それらの研究はR&Dに焦点を当てたものではなかったり、最近の戦略論の議論を反映していないものが多かった。それゆえ今年度は、企業・事業戦略やR&Dプロセスそのものに関する新たな議論の理解に努めた。中核技術を蓄積する過程で、収益よりも学習に重きをおいた事業展開を行う際の管理会計システムのあり方、破壊的技術への適した対処を促進する管理会計システムのあり方など、いくつか更に追究すべき点が存在するので、今後それらの更なる追究に努めたい。
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