本年度は、日本のいくつかの病院で疾患群別原価計算を中心とした原価計算システムについて調査する機会を得た.最近の高度な電子カルテシステム等の導入により、これらとリンクする形で、部門内各種サービス(診療行為等)の原価把握をベースに患者・疾患群・医師等多様な原価計算対象に対して原価を集計することが可能な高度な原価計算システムが、先進的な病院では構築されつつあることが明らかになってきた。今後はさらにいくつかの病院における取り組み状況を把握し、日本医療界全般における正確な状況把握に努める必要がある。 また三重県立病院におけるバランスト・スコアカード(BSC)活動についてインタビュー兼ディスカッションをする機会を数回にわたり得た。このことにより、日本医療界のBSC導入の最先端における現状と課題を把握することができた。今後は三重県立病院における取り組みをさらに詳細に把握・分析するとともに、より多くの病院におけるBSCへの取り組みについても調査し、日本医療界全般における現状と課題について把握する必要がある。 一方、外国における状況としては、カナダ・オンタリオ州の医療機関におけるBSCと州医療システムとしてのBSCについてインタビュー調査する機会が得られた。日本医療界よりもはるかに導入が進んでいるという現状と先進的なBSCの仕組みを知ることができた。 日本及び外国における調査から、BSCが原価計算や診療プロトコルによるマネジメントを統合し、諸管理会計ツールを一つの経営管理システムとして有機的に機能させているようであることが明らかになりつつある。今後はBSCを中心に病院の管理会計システム全体についてさらに研究していく必要がある。
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