本年度は、日本のいくつかの病院におけるバランスト・スコアカード(BSC)活動について調査・研究する機会を得た。日本医療界においても急速にBSCに対する関心が高まりつつあることが明らかになった。また先進的な病院で取り組まれているBSC活動は目的や活動対象などが多様であることも判明した。すなわち業績評価目的を中心とするBSCばかりでなく、コミュニケーションツール目的、ビジョン・戦略の浸透目的、リスクマネジメント目的、品質管理活動の一環、ナレッジマネジメント活動の一環、など多様な目的からBSCの試みがなされつつあることが明らかになった。またBSC活動の対象も看護部門・医事課など特定部門のみを対象としたものから病院全体のみを対象とした活動まであるほか、全階層レベルで試みられている事例もある。 また前年度に引き続き三重県立病院におけるバランスト・スコアカード活動について調査・研究し、論文として整理・公表することを通じて、日本病院界へのBSCの普及の促進をはかった。さらに11月には日本医療バランスト・スコアカード研究学会を設立し、1月に第一回の学術総会を開催するなど日本病院界へBSCの普及活動に勤めた。 一方、外国における状況としては、イギリスの一病院におけるBSCの取り組みについてインタビュー調査する機会が得られた。まだイギリス病院界全体としての状況は把握しきれていないが、イギリスにおいても個別病院レベルのBSCが普及しはじめているようであった。イギリスにおける状況については今後さらに調査の必要がある。 加えて、病院における部門別原価計算システムの費目別直課・配賦状況などを含む詳細なレベルの実態を、アンケート調査に基づいた分析により明らかにした。部門別原価計算においてすら、直課状況は低く、配賦基準も十分に適切でない状況が明らかになった。
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