研究概要 |
連結ベースの配当政策や連結納税制度が株価形成に及ぼす影響を実証的に検証するには、まず、それらを採用している企業サンプルを収集する必要がある。しかしながら、平成14年度現在、上記の実証分析を行うに足る十分なサンプルを確保することができない。そこで、平成14年度は、次年度以降の本格的な分析に備えるため、過年度のデータを用いたパイロット・テストを行った。すなわち、1984年〜1998年の延べ7,071個の有配企業サンプル、ならびに801個の無配企業サンプルに対して、(1)企業の配当政策は、実際に株価に影響を及ぼしているかどうか、(2)影響を及ぼしているとすれば、配当は、「フリー・キャッシュ・フロー緩和仮説」と「収益性シグナリング仮説」のいずれの仮説と首尾一貫した役割を果たしているのかを検証した。 その結果、(1)については、それを肯定する結果が、また、(2)については、収益性シグナリング仮説と首尾一貫する証拠が得られた。さらに、有配企業の経営者が発表する配当変化シグナルは、利益変化の方向と有意に関係しているという強力な証拠を得た。しかしながら、無配企業の復配シグナルは、利益変化の方向と無関係であることが判明した。これらの発見事項は、株価最大化を目標とする企業経営者の配当政策に対して、以下の有用な方向性を提供している。まず、有配企業については、(1)次期に増益の裏づけがある場合に増配予想を行うべきである。(2)減益予想と増配予想の組み合わせは、株価上昇に対してそれほど有効ではない。(3)減配予想は、次期に増益が見込まれる場合に公表した方が、株価下落を最小限に食い止めることができるという意味で有効である。一方、無配企業については、一般的に、安易な復配予想は控え、獲得した利益は内部留保に回すべきである。無配企業が復配してもよい時期とその条件については、次年度の研究課題としたい。
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