研究概要 |
本研究では、連結ベースの配当政策が株価形成に及ぼす影響を検証するために、オールソン・モデルに依拠した線形回帰モデルを推定する。しかしながら、そのような推定を行うには、その前提として、配当と株価の間に線形関係が成立している必要がある。かりに、配当と株価の関係が非線形であるならば、それを加味した回帰モデルを推定する必要があるからである。そこで、平成15年度は、最終年度の本格的な分析の前段階として、配当と株価の間の線形問題を実証的に検証した。具体的には、1985年〜1998年の延べ8,364企業年のサンプルに対して、企業評価における配当の役割は、5円未満の配当と5円以上の配当のいずれが大きいかを検証した。1株当たり5円という配当水準に注目した理由は、1999年1月の有配基準撤廃まで、東京証券取引所は、その上場企業に対して、実質的に、1株当たり5円以上の配当支払いを要求していたからである。 その結果、企業評価における配当の相対的な役割は、1株当たり5円以上の配当よりも、5円未満の配当の方が有意に大きいという証拠が得られた。さらに、1株当たり1円単位で配当係数の変化分を調査したところ、1株当たり5円という配当水準を境界として、それを下回る配当水準については、配当と株価の関係が凸関数であり、それを超える配当水準については、配当と株価の関係がほぼ線形であることが明らかになった。この発見事項は、配当と株価の関係が、単純な線形関係ではなく、一部、非線形であることを証拠づけている。平成16年度は、平成15年度に獲得された知見を加味した、より精緻な回帰モデルに基づいて、連結ベースの配当政策および連結納税制度が株価形成に及ぼす影響を検証する。 なお、平成15年度の研究成果は、マレーシアで開催された第5回アジア・太平洋Journal of Accounting & Economicsシンポジウム(2004.1,6)にて学会報告された。さらに、当該内容は、雑誌『経営研究(大阪市立大学)』および雑誌『会計』に掲載予定である。
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