今年度は主に、虚数乗法を持つ楕円曲線の2変数p-進関数の構成と、この関数と楕円ポリログの関係について調べた。 2変数p-進L-関数の各変数の意味は、従来、楕円曲線のパラメーターとモジュライ方向のパラメーターの2変数であるという解釈が取られていたが、昨年度の終わりに、それとは異なる自然な新解釈を見いだすことに成功した。すなわち、このp-進L-関数が補完するEisenstein-Kronecker値の母関数が、対応する楕円曲線のポアンカレ束に付随するテータ関数であることを証明した。今年度当初は、この解釈を用いて、虚数乗法を持つ楕円曲線が素数pでgood ordinary reductionを持つ場合に、2変数p-進L-関数を構成することに成功した。現在この結果を論文として執筆中である。 その後、この結果を楕円曲線がpでgood supersingular reductionを持つ場合に拡張することを試みた。しかしながら、母関数の対応するp-進冪級数を調べる仮定で、ordinaryな場合と異なり、収束半径が1未満であることが分かり、good ordinaryの場合とは本質的に異なることが起こっていることが確認された。 以上の結果と平行にして、モジュライ空間上の楕円ポリログを調べた。ポリログがEisenstein Kronecker級数と密接な関係にあることから、楕円ポリログを研究する上で、Eisenstein Kronecker値の母関数である、上記テータ関数が大切な役割を果たすことが期待される。この考えに基づいて、楕円ポリログを研究し、どの様な形をしているか、ある程度の理解を得ることができた。これらの結果もいずれ論文という形で発表する予定である。
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