研究概要 |
代数体上に定義された代数多様体の有理点の分布を調べるときに有用なものとして,高さ関数--各有理点にその高さ(有理点の算術的な複雑さを表す実数)を対応させる関数--があります.しかし一般的には,高さ関数は(対応する直線束を固定しても)一意的ではありません.したがって,代数多様体上に標準的な高さ関数を定めることができるか,ということが問題になります. アーベル多様体では2倍射を用いて標準的な高さ関数(Neron-Tateの高さ関数)が定められること,あるK3曲面ではSilvermanによって二つの対合射を用いて標準的な高さ関数が定められることが知られています.前者についてはより一般に,よい性質をもった自己射をもつ射影的代数多様体の上に,標準的な高さ関数が定められることがCall-Silvermann, Zhangによって示されています. 今年度の研究で,良い性質をもったいくつかの(つまり,1つ以上の)自己射をもつ射影的代数多様体の上に標準的な高さ関数を定められることが分かりました.これは上に述べた場合の一般化になっています.また今回の構成方法によって,Silvermanの考えたのとは別のK3曲面の上に標準的な高さ関数を定められることもわかります.さらに,有理点(次元0の部分多様体)の標準的な高さだけでなく,一般の部分多様体の標準的な高さも、算術的交叉理論(Arakelov幾何)を用いて定められます.
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