研究概要 |
今年度も全般的には昨年度に引き続き、U(2,2),U(3,1)の志村多様体の混モチーフに寄与を持つ保型形式の記述を目指したが、関連する他の問題も考察している。 まず前年度に得られた、混モチーフに寄与するU(2,2)上の保型形式の局所成分の記述を拡張し、GL(4)に対する類似の表現を全て決定した。またそれらをGL(2)からの局所Howe双対性によって構成した。これらをU(2,2)の場合とまとめて論文「CAP forms on U_<E/F>(4)I.Local theory」として学術誌に投稿した。 一方でこれらを局所成分に持つ保型形式を特徴づけるためには、これらの表現の「退化Whittaker模型」正確に言うと「波面集合」の記述が必要である。Bernstein-Zelevinskyによるp進一般線形群の場合の波面集合の記述を拡張すべく、その内部形式であるp進斜体上の一般線形群の既約表現を計算した。特にその既約ユニタリ表現の記述を得た。9月にフランスPoitier大学で行われたp進群の表現論のシンポジウムに出席して、この結果を発表し、類似の結果を得ているBadulescu, Renardらと議論した。同時に主催者であるBushnell, Henniart両氏から、我々の結果だけでは波面集合を捉えられない例を得たことを知らされ、こちらの研究はそれ以降ストップしている。 その後は、上記の局所成分を持つU(2,2)の保型形式を全て記述するため、U(1,1)とU(2)のSelberg跡公式の比較を始めた。一般線形群以外の場合の跡公式の比較はいわゆる内視論を用いる必要があり、その計算をいくつか進めている。目下のところ形になっていないが、来年度の前半にはおおむね完了するものと思われる。
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