研究概要 |
Rを可換環,MをR-加群とし,Mから定まるRees代数R(M)について考える.イデアルの定めるRees代数についてはこの10余年で多くの研究結果が判明されてきたが,加群から定まるRees代数となると未だ不明なところが多い対象である.一般の加群を取り扱う議論も必要ではあるが,私の興味として多項式環の剰余体の極小自由分解から得られるシジジー加群の定めるRees代数について調べてみた.このようなシジジー加群Mは典型的なBuchsbaum加群であり,イデアルのRees代数で起きている現象からの推論で,MのRees代数をとるとCohen-Macaulay環の性質をもつのではないかと予想される.そこでκを体としA=κ[a_1,a_2,【triple bond】,a_d]を多項式環とする.κの次数付きA-加群としての極小自由分解(つまりKoszul複体)をとり,M_pでp-次シジジー(つまりp-1-次サイクル)を表すとする.M_1のRees代数の環論的性質は容易に判明するので,M_2のRees代数R(M_2)を調べてみる.するとR(M_2)はグラスマン代数を一般化した形をした代数となり,Gorenstein環で一意分解整域となることがわかった.さらに体が無限体であるときは2次特殊線形群のある部分群の作用による不変式環として出現することもわかった. グラスマン代数の一般化という観点からRees代数を見てみよう.次の代数を考える:BをNoether環,X=(X_<ij>)を変数からなるm×n次行列(m【less than or equal】n).Γ(X)をXの極大小行列式全体からなる集合とする.l【less than or equal】mと取り,R=B[{X_<ij>}_<1【less than or equal】i【less than or equal】l,1【less than or equal】j【less than or equal】n>,Γ(X)]とおく.上で述べたR(M_2)は,n=d,m=2,l=1の場合である.そして一般にBがGorensteinであることの必要十分条件はRがGorensteinとなることであり,Bが一意分解整域となる必要十分条件はRが一意分解整域となることなどがわかった.さらにBが無限体であれば,Rはある群の作用による不変式環となることもいえる.
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