研究概要 |
研究のテーマは「アーベル多様体の保形性」である。これは「Q上定義される楕円曲線は全て保形性を持つ」という谷山-志村予想と呼ばれる問題に端を発するものである。現在では解決されたこの予想は、有名なFermat予想と直結して注目を集めた問題であって、1次元アーベル多様体である楕円曲線と1変数保形形式を結び付ける深遠な意味を持っている。現在では、この予想の対象はQ上の楕円曲線に留まること無く、アーベル多様体のより大きな族に拡張されている。このテーマの下に、とりわけ、(1)(1,d)型のアーベル曲面のモデュライ空間におけるある性質を満たす有理点の決定 (2)種数2の代数曲線に関するアルゴリズムの開発とその実装 (3)アーベル曲面と2次元ジーゲル保形形式との対応という問題に焦点を当てて研究を行っている。 (1)の問題について、対応するアーベル曲面が虚数乗法を持つような有理点に関する一連の結果の纏めとして、今年度の7月にスペインのUniversitat Autonoma de Barcelonaで開催された国際シンポジウム「Modular Curves and Abelian Varieties : Euro Conference」において現在の研究の進展を含めた総合的な成果を「On abelian surfaces with complex multiplication」というタイトルで発表した。また、そこで発表した研究成果の一部分となる下記に挙げる論文が2003年中に掲載された。 また、(2)・(3)の問題に関しても、ヒルベルトカスプ形式のFourier係数の計算を始めとして、いくつかの研究を継続中であり、これらの研究で得た結果に対しても、論文として纏め発表する準備を行っている。
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