研究概要 |
本研究の目的は、アーベル多様体のモデュライ空間における有理点とその点に対する保形性の問題、および、これらの問題から派生するアルゴリズムの開発とその実装という問題に取り組むことであった。特に、 (1)(1,d)型のアーベル曲面のモデュライ空間におけるある性質を満たす有理点の決定 (2)種数2の代数曲線に関するアルゴリズムの開発とその実装 (3)アーベル多様体とジーゲル保形形式との対応 といった具体的な問題に焦点を当てて研究を押し進めている。 (1)の問題に関しては、山形大学理学部の村林直樹氏、(2)の問題に対しては立命館大学理工学部の加川貴章氏、(3)については広島大学工学研究科の市原由美子氏らと情報交換を密に行った。それらの成果を昨年度から継続しているCM型のアーベル曲面のデータの収集やヒルベルトカスプ形式のフーリエ係数の計算に還元した。 また、(2)と(3)の問題に関連して、スペインのUniversitat Politecnica de Catalunyaに所属するJoan C. Lario氏と楕円保形形式の変形環の計算についての共同研究を行っている。 さらに、早稲田大学理工学部の足立恒雄教授の監修のもとRegensburg大学Jhrgen Neukirch氏によってドイツ語で書かれた教科書「Algebraishe Zahlentheorie」の邦訳を行った。この教科書の内容は、代数的整数論を現代的な数論幾何の視点から包括的に捉えなおしたものであり、本研究課題の対象である代数曲線の理論を研究代表者自身が整理し、まとめなおす意味でも非常に有益であった。
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