写像類群に対するGrothendieck-Riemann-Rochの定理の、整係数コホモロジーにおける類似(整係数Grothendieck-Riemahn-Roch公式)を証明すること、その応用として写像類群の整係数コホモロジーの構造を解明することを目的として研究を進めた。今年度はとくに(i)コホモロジー作用素とGysin準同型の関係(とくにそれらの非可換性)(ii)写像類群の巡回部分群に対する整係数Grothendieck-Riemann-Roch公式を中心に研究を進め以下の結果を得た。 1.閉多様体をファイバーとするファイバー束(曲面束とは限らない)に対し、コホモロジー作用素(Steenrod作用素)とGysin準同型との非可換性が、相対接束(ファイバーに沿った接束)の全Stiefel-Whitney類または全Wu類で記述されることを示した。結果としてコホモロジー作用素に対するRiemann-Roch型公式を得た。これは昨年度に得た曲面束の場合の公式の一般化に当たる。 2.Bernoulli数の分母と分子に関する「Voronoiの恒等式」の(一つの)一般化を得た。 3.前項の結果とG-符号数に関する考察を組み合わせることにより、写像類群の巡回部分群に対する整係数Grothendieck-Riemann-Roch公式を証明した。昨年度までは「半自由」という仮定の元でしか証明できていなかったが、今回その仮定をはずすことに成功した。
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