研究概要 |
本研究課題のテーマである、Nevanlinna理論の交差理論的側面に関して以下の二つの研究をした。 1.値分布論の発生当時からの中心的な話題に有理型関数の第二主要定理がある。この定理を「摂動」できるか?別の言い方では、ターゲットをsmall functionに拡張できるか?という問題がある。もともとはR.Nevanlinnaによって1920年代に予想されたもので、その後、1960年代のC.Chuang、1980年代のN.Steinmetz, C.Osgoodらの研究によっで部分的に解決されていた。今回、私はこの問題を完全に解決することが出来た(論文校正中)。この結果の代数的類似が同時に証明でき、結果としてP.Vojtaによって予想されていた関数体上の曲線の高さ不等式を最良評価で証明できた。また、これらの結果の応用として1980年代にA.Eremenkoによって予想されていた有理型関数を係数とするある種の関数方程式に関する予想も証明できた。 2.アーベル多様体をターゲットとする正則曲線に対して第二主要定理を証明するには、正則曲線のジェットリフトに対するある種の構造定理が必要である。今回、例えばMoving targetに対する第二主要定理など、いくつかの技術的な結果を確立してその構造定理を証明した。 これら二つの研究は、いずれも第二主要定理型の不等式を導く一般的な枠組みである、「Wronskian定式化」では証明できない不等式を扱っており、個別的な現象であっても今のところ一般論では手の届かないところで求めたい不等式を得ることに成功したところに意義があると思う。目下、上記研究の一般化及び応用を研究している。特に代数多様体の分類理論において重要な小平次元との関連でsmall functionを捉えてみたい。
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