研究概要 |
同一の閉曲面上に,頂点数の等しい2つの三角形分割が与えられたとする.このとき,これらが局所的変形である「対角変形」と呼ばれる変形を繰り返すことにより,グラフの単純性を保存したままで,一方がもう一方に移りあうことが出来るか.この問題について,任意の閉局面上で,頂点数が十分に大きければ成り立つことを,根上が示している.私たちはこの定理を最小次数に関して,拡張することを試みた.特に,最小次数4以上の三角形分割について,同様の事実を示すことに成功した.しかしながら,最小次数5,6以上については,無限個の反例を構成することに成功した.さらに,どの辺も次数Kの頂点に被覆されている三角形を,k=3,4,5,6に対して,分類することに成功した.(これらは,どの辺に対角変形を施しても,最小次数をk-1以下にするので,上の結果の反例になっている.) 四角形分割についても,中本により,三角形分割と同様の事実が成り立つことが示されていた.この定理についても,最小次数に関して,拡張しようと試みた.しかしながら,最小次数3であり,どの辺についても対角変形を適用できない四角形分割が存在することを突き止めた.そして,特に,されら(どの辺も次数3の頂点に被覆されている四角形分割)は,ある例外的な族を除くと,ある三角形分割の放射状グラフ(radial graph)であることを証明した. このように,三角形分割の定理と四角形分割の定理を最小次数に関して,ある部分は拡張し,また,ある部分は拡張不可能なことを証明した.これ以外にも,穴の1つ開いた曲面上で,すべての頂点がその境界上に現れている外三角形分割(これらは外平面グラフの拡張になっている),また,閉局面上のグラフで,三角形の面が十分に多いものについて,同様の結果を得た.
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