研究概要 |
本研究は,代表者がこれまでに行ってきた種数2のJones表現に関する代数的研究,並びにR. Lawrenceが提唱した,岩堀-Hecke環表現の,組みひも群の場合の配置空間を用いた位相幾何的解釈を出発点とし,一般種数のJones表現の性質を,代数的並びに幾何的観点から研究し,Jones表現の位相幾何的解釈の有無について決着を付けつつ,Jones表現のより深い性質の理解と代数的性質の位相幾何による解釈を目指すものである. 本研究の遂行に当たっては種数2のJones表現の性質に関する,次の手法・観点を出発点とした: 計算機実験による大量の具体的計算;表現論を援用した代数的考察;岩堀-Hecke環と配置空間の幾何の関係に立脚した位相幾何的観点. 更に,種数2の場合を雛形として,一般種数のJones表現の研究を目指した.同時に量子不変量の理論を検討により,Jones表現との関連を探るための準備とした. 以上の遂行のために,まず計算機の購入により,大量の計算実験を行うための環境を整備した.また,本研究を行う上で必要となる関連図書を適宜購入した.更に,国内外で行われる研究集会等に参加することにより,新しいアイデアを出し,研究の新しい方向を探る上で極めて重要な,他の研究者との知見の交換を行なった. 計算機実験の結果,種数3の場合にt=1の摂動展開で得られる次数付き商加群の内,最初のものの構造を,ある対称群の表現空間として決定することができた.今後は表現論の援用により,高次次数商の決定,一般種数への一般化が期待される.また,Lawrence, Bigelow等による配置空間のトポロジーとの関連の検討の結果,曲面のJones表現の理解に重要と思われる,ある種の局所系が存在することを示すことができた.
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