14年度の研究に引き続き、15年度にて研究課題が完成した。 問題:4次元ユークリッド空間X上インスタントン数kをもつU(r)ベクトル束のヤン-ミルズインスタントン場AにN=2超対称性を入れよ。 結果:X上U(r)束がU(r)xSU(N)束に拡張される。SU(N)束方向がN=2超対称性の影響で膨らみ、フェルミオン場(自己双対ゲージーノと自己双対ヒッグスジーノ)が入いる。ここでSU(N)束のインスタントン数は1とする。この「SU(N)束方向のフェルミオン場」は2コのある種のデイラックゼロモードに対応している。よってそのモジュライ(ダークモジュライと呼ぶ)の次元は4Nlになることが指数定理から解る。そしてそのフェルミオン場が具体的に行列解として書き下せる。 証明の大まかな流れを述べる。Barthの定理をスーパーツイスター空間Pで考える。P上スーパー層のコホモロジー理論を展開する。その際、P上ランク(r、N)のスーパーベクトル束Eで考え、新しく定義したスーパーチャーン類でEの同型類をコントロールさせる。このスーパーBarth定理のreal formを取ってツイスター対応を考えながら考察していくと、N=2超対称インスタントン解(連立非線形偏微分方程式)がある条件を満たすスーパー行列解(スーパー行列方程式)と一対一に対応する定理が得られる。この定理を使って行列解(四元数表示と実数表示がある)を具体的に書き下すと上記の「結果」を得る。さらに複素数表示をするとモーメント写像を使ってN=2超対称インスタントンモジュライがU(r)インスタントンモジュライ(良く知られているモジュライ)とダークモジュライの直和の型に書けることが解る。これはモジュライのコンパクト化になっている。さらに超対称性が保たれている部分と破れている部分の両方を含んでいることが解る。 この結果はADHM構成にN=2超対称構造を入れた数学的に完全な分類定理である。すなわち部分的な解のみを扱っているのではない。 Xを非可換ユークリッド空間にした議論はKapustinたちの結果と合わせて簡単に得られる。結果はU(r)方向のモジュライの特異点が解消される。ダークモジュライには影響しない。
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