研究概要 |
平成15年度に得られた本研究の最大の成果は,実数直線上のルベーグ測度零の集合全体がなすイデアルについて,Hechlerの定理と同様の結果が成り立つことを証明したことである. Hechlerの定理とは,自然数集合上の関数全体がなす半順序集合に,ある条件を満たす任意の順序構造を,強制法によって共終集合として埋め込めることを主張する命題である.本研究では,同様の主張が実数直線上のルベーグ零集合のなすイデアルについて成り立つことの証明を試み,Hechlerの原定理の証明に詳しいMaxim R.Burke氏の協力を得て,完全な解決に至った. 15年度からの新たな取り組みとして,可算離散空間のコンパクト化と実数の集合論との関係について,研究を始めた.完全正則空間のコンパクト化全体がなす束構造については,位相空間論の一分野として一般論が構築されているが,具体的な空間について束の構造を詳細に調べることはあまり行われておらず,実数の集合論との関連も考えられていなかった. 一般に,距離化可能空間のStone-Cechコンパクト化は,同じ位相を導く距離関数に関するSmirnovコンパクト化またはHigsonコンパクト化の全体で近似できることが知られている.本研究では,可算離散空間ωのStone-Cechコンパクト化をSmirnovコンパクト化またはHigsonコンパクト化で近似するために本質的に必要な距離関数の最小個数を考え,実数直線の構造に関連する既知の基数不変量との関係を調べた.この問題については,15年度中に一定の成果を得ており,16年度も継続して取り組む予定である.
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