研究概要 |
今年度は符号理論の他分野への応用を目的として、符号の頂点作用素代数への応用を研究した。符号、または格子から取り扱いやすい頂点作用素代数が構成されることが知られている。筆者はDong, Lam,山田裕理、横山和弘と共に、√<2>A_2型格子から構成される頂点作用素代数の部分代数として、パラメーターが特別な場合ではあるがW_3代数と呼ばれる特別な頂点作用素代数を実現した。またその既約加群の分類、既約加群の指標の計算、加群の完全可約性、C_2有限性と呼ばれるある種の有限性を証明した。このW_3代数はZ_2×Z_2上のある符号に関連する頂点作用素代数の、位数3の自己同型で固定される部分頂点作用素代数にもなっている。一般に頂点作用素代数と、その位数有限の自己同型群で固定される部分頂点作用素代数の間には表現論にきれいな関係があることが予想されているが、それを群の位数が3の場合に検証出来た、筆者が知る限りでは初めての非自明な例にもなっていて興味深い。 W_3代数の研究はZamolodchikovに始まり、その後多数の人によってその定義が拡張され、構成、表現論が研究されてきが、その既約加群の分類、加群の完全可約性は未解決である。今回の我々の結果はパラメーターが特別な場合ではあるが、W_3代数の表現論を完全に決定した重要な結果である。
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