グラフ理論の主要分野での古典的問題群に対する最も有力な現代的アプローチとして、擬確率的手法がある。これはSzemerediが整数論におけるErdos-Turan予想の解決のために導入したRegularity捕題というグラフ理論の捕題を基礎にしている。 本年度、筆者は次のことをある数学的枠組みの中で示した。与えられたグラフGに対し、SzemerediのRegularity補題が与えるGのファジィグラフ近似を知っていると言うことと、定数時間確率的近似アルゴリズムを利用してグラフGの性質を調べられるということ、また、グラフGの内部に含まれる小さな部分グラフの数を大まかに把握していること、この3つのことが本質的に等価である。これは、Regularity補題の自然な特徴づけを与えたことと、理論計算機科学的な意義のふたつがある。こちらは、行列の積の計算アルゴリズムへの応用もある。 また、この擬確率的手法は、現在、グラフ理論においてのみ展開されているが、超グラフ理論においても有用である可能性が高いことがわかってきた。超グラフ理論における擬確率的性質を確立することができれば、それを利用して、超グラフ理論における様々な古典的問題が、グラフ理論の場合がそうであるように、解決できる可能性が大きい。こちらはまだいくらか障害があり、部分的成功にとどまっているが、見通しは暗くないと考えている。これについては次年度も研究を続行する予定である。
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