平成16年度も、平成15年度に引き続き、組合せ論・グラフ理論の特に極値問題において、擬確率的手法の研究を行った。擬確率的手法を駆使する際に、グラフなどの離散構造を標準化することによって、doubly-stochastic行列またはそれに準ずる構造に置き換えることができる。そのためにdoubly-stochastic行列の研究は基本的で極めて重要である。また、固有値の分布が、その離散構造の擬確率性を特徴付けることが知られている。doubly-stochastic行列の固有値の分布について1980年代にMincが提起した問題に対して、反例を見つけ、さらにより多くの反例の分布状況を調べたが、それほど多くは無く、かなり稀な場合であることがわかった。上の研究に関連して、やはりdoubly-stochastic行列の成果として知られ、グラフ理論をはじめとする組合せ論において広く応用されているBregmanの定理がある。この定理は、80年代に拡張されたものが発表されているが、特定の次元のものに限られていた。そのために、応用の範囲が限られていたが、それを一般次元の場合へと拡張することに成功した。このことによって、より広い分野へ応用されることが期待される。また、擬確率的手法を強化することにつながると思われる。離散数学において基本的な擬確率的現象を力学系理論的視点及び理論計算機科学的視点から特徴付ける成果を得た。
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