本研究課題は、不動点の存在定理、及び不動点への近似定理等の不動点に関する理論について研究をすること、及びこの理論を基礎的な土台として、非線形最適化問題および均衡点問題への応用することである。 現在までに得られた研究成果のうち、論文雑誌に掲載されたものは2編あり、以下にその概略を述べる。 リストの最初の論文は、Stackelberg均衡解について論じたものである。 3者間のゲームにおけるStackelberg均衡解について集合値写像を用いて定式化し、その解の存在性について研究した。集合値写像の概念を用いた所に特色がある。具体的には、3者の戦略集合をコンパクト距離空間とし、利得関数を連続な関数であると仮定した。その状況において、均衡解の存在する十分条件を得た。同時に、その十分条件を満たさない状況で、実際に、均衡解の存在しない例を与えた。 リストの2番目の論文は、非拡大写像の不動点への収束定理について論じたものである。 特に、空間に関して狭義凸性等の仮定をせずに、2つの可換な非拡大写像の共通不動点への収束定理について研究した所に特色がある。具体的には、Banach空間のコンパクト凸集合上の2つの可換な非拡大写像に対して、ある平均と凸結合させるMannタイプのiterationを考えた。このiterationはIshikawaの定理におけるiterationに比べはるかに分かりやすいものである。このiterationに関する収束定理が得られたことで、様々な応用が期待できる。
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