研究概要 |
今年度の研究計画に基づき,以下の研究を行った。 三次元渦運動を記述するNavier-Stokes方程式の一次元モデル方程式として与えられた一般化粘性項を持つConstantin-Lax-Majda方程式の数学解析を行った。その結果、どんなに大きな粘性拡散があっても、粘性係数の大きさを適当に小さく取れば解は有限時間で爆発することを示した。また逆に粘性係数が十分大きくとっても、適当な拡散項をつけなければ解の大域存在が保証されないことも示した。これはモデル方程式の持つ二次の非局所的な非線形項が極めて強い非線形性を有しており、粘性拡散ではその成長を抑制できないことを意味する。この意味で十分な拡散があればどのような粘性係数に対しても解が大域存在するNavier-Stokes方程式とは解析的な性質が異なり、その点ではモデルとして成功しているとは言えないが、この二次の非線形項がもともと渦引き延ばし項の数学モデルとして導入されたことを考えると、3次元渦運動における引き延ばし項の解の爆発への大きな寄与を示唆するものである。以上の成果は爆発解の結果は掲載が予定されており、大域解に関する論文は現在投稿中である。 次ぎに、このCLM方程式の複素時間特異点を、数学的・数値的に研究した。それによると、複素時間特異点は2次元渦層における数値結果と同様連続に分布し、特異点の生成は、それらの分布と実時間軸との衝突として表現されることがわかった。また、特異点が存在しても、特異性の発生する時刻以後にも複素時間領域の範囲では解が存在しうることがわかり、この点は渦層における特異点生成後の渦巻解の存在に一つの示唆を与えてくれるものである。
|