本年度は、九州大学システム情報科学研究院・山下雅史教授のグループとの共同研究を行い、確率的ネットワークにおける最大パスの問題について調べた。これはLSIの設計における遅延時間の評価について応用されうるものであり、応用面から見ても有用な研究であると思われる。 その問題とは以下のようなものである:「各枝に独立で正規分布に従う確率的な重みを持ったグラフを考える。このグラフは有限でサイクルをもたず、入口と出口が一点ずつあるとする(確率的ネットワーク)。このとき、入口から出口までのパスの重みの最小のものと最大のものの分布を調べよ」 直列につながった枝については、独立性を用いて正規分布の畳み込みで議論が済むが、並列につながった枝については2つの正規分布の最大値の分布を求めなければならない。グラフが大きくなっても重積分による形式的な記述はできるが、実際にそれを計算することは難しい。本年度の研究においては、正規分布の性質を利用してグラフを変形することで、最大路の確率的な評価することに成功し、最大路の裾の評価を行った。
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