研究概要 |
本年度は、主にエルゴード理論や確率論についての研究を行い、次年度以降の分散アルゴリズム理論の応用を検討課題とした。 具体的には一次元のランダムな環境のもとでのランダムウォークの再帰性、推移性について調べた。過去に知られているランダムな環境のもとでの最も基本となるモデルは、Solomon(Ann.Prob.,1975)によるものである。すなわち、ランダムな環境が各状態において独立で同分布の設定の下でのもので、共通の分布のパラメータに依存して推移性、再帰性が報告されている。一方で、ランダムな環境が同分布性をみたさない例として、Konsowa & Mitro(J.Theor.Prob.,1901)によって調べられている。そこでは、ランダムな無限2分木の上でのランダムウォークについての議論がSolomonの結果を拡張する形で述べられており、さらには、Konsowa(Stat.Prob.Lett.,2002)によって、重複対数の法則を用いてその別証明を与えた。本年度の研究においては、Konsowa & Mitroとは別の単純なモデルにより、それに対応する結果を導き出すことができた。さらに、証明方法としてKonsowaのように重複対数の法則を必ずしも使う必要がなく、それよりも弱い結果を用いて証明することも言及している。特殊な設定のもとでランダムな環境が小さくなっていくときのスピードと再帰性の関係について例を示した。
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