研究概要 |
p進体上の上半平面上の跡公式を,p進体上の特殊線型群の双曲的不連続部分群に対応する基本領域の上のマルコフ過程に付随する作用素の半群に応用することにより導いた,井原のゼータ関数の行列式表示を用いて,井原のゼータに対するリーマンの仮定成立の必要十分条件を与えた。すなわち,リーマンの仮定が成立することは,特殊線型群の部分群の幾何的性質から定まる有限マルコフ連鎖の推移確率行列の固有値がある区間に属することと同値である。また,この跡公式と伊原ゼータの行列式表示が成立するために必要な,p進特殊線型群の部分群に対する双曲性の条件と,従来から研究されている,剰余群が有限グラフへの作用を与えるためのtorsion-freenessの条件の両方が成立しているときに,対応するグラフがbipartiteになることを示した。さらに,対応するグラフの頂点の数と,p進上半平面における基本領域の面積との間の関係,ゼータ関数の表示に用いた有限マルコフ連鎖と従来の有限グラフの上のランダムウォークとの対応関係を明らかにした。 さらに金子宏氏(東京理科大)との共同研究として,p進体の無限次元拡大の上への確率過程の拡張定理を一般化した。すなわち,局所体の増大列を考え,そのそれぞれに無矛盾にディリクレ形式が与えられているとしたとき,局所体の射影極限である無限次元空間へディリクレ形式を拡張した。これに関して集合の非線形キャパシティーを求め,1点からなる集合がslim setになるための条件を与えた。
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