研究概要 |
本研究では出力作用素が弱い非有界性を有する無限次元連続時間システムを取り上げ,外乱に対してロバストなサンプル値H_∞コントローラの一構成法を与えた.「通常,制御対象は連続時間系であるのに対してコントローラは離散時間系である.そのため,制御対象にコントローラを実装するためにはサンプラとゼロ次ホールドが必要となる.したがって制御系全体を考えると,連続時間系と離散時間系が混在した複雑なシステムとなる.有限次元連続時間システムに対しては10年程前に,多くの研究者がサンプル値H_∞制御問題を考察し,コントローラの設計法を与えている.その中で,山本(京都大)によって提案されたリフティングの手法は,サンプラとゼロ次ホールドを有する有限次元連続時間システムを,入出力空間が無限次元となる等価的な離散時間システムに置き換えているという点で非常に画期的なものであった. 本研究ではサンプラとゼロ次ホールドを有する無限次元連続時間システムをリフティングの手法を用いて等価的な無限次元離散時間システムに変換している.そして,この無限次元離散時間システムに対しで状態空間炉有限次元となるモデルを導出し,そのモデルに対してH_∞制御を達成するための有限次元離散時間コントローラを構成している.しかしながら,このような方法で構成されたコントローラが,もとのサンプラとゼロ次ホールドを有する無限次元連続時間システムに対して,必ずしもH_∞コントローラとして機能しているとはいえない.そこで,離散時間剰余モードフィルタを付け加えた形のコントローラを考案し,これが有限次元のサンプル値H_∞コントローラになり得ることを証明した.
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