研究概要 |
連立一次方程式の係数行列の非対称性に着目した定常反復法の改良として,今年度はもっと一般的な行列の行列分離の仕方を考慮し,Hessenberg行列へのSOR法の緩和係数の選び方等も示した論文が掲載された(雑誌論文1).今年度,これに関連する学会発表等を行ったが,疎行列ではない非対称性がある密行列に対する別タイプの数値実験を行った結果,方程式を解く順所付けによる収束の速さの違いが改めて確認され,順所付けの意義がはっきりした.これらと比較しながら,行列分離法での係数行列の非対称性による改良点の模索を来年度も継続して行う. 一方で,室谷義昭教授(早大)とH.Brunner教授(Memorial University of Newfound-land)との共同研究である非斉次項を含むパンタグラフ方程式とVolterra積分微分方程式の第1区間の計算に選点法を適用した場合の誤差解析が掲載された(雑誌論文2). 特に今年度は,上記とは違うタイプの遅延型微分方程式の中で,各世代間の生物の個体数に関する区分的定数遅れを持つロジスティック方程式を扱った.この方程式については,解の大域的漸近安定性の十分条件に関するLyapunov関数を利用した結果が今までに多く得られている.しかし,数値実験を部分的に活用し,従来と違ったタイプの証明を用いた結果,十分条件の範囲を大幅に広げることができた(雑誌論文3及びJ.M.A.A.に投稿中).現在,この証明法を利用することで改良された結果等も加えて,口頭発表を行ったり,論文として投稿準備を進めている.
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