支配的サイクルとは、そのサイクルをグラフから取り除くと、いくつかの孤立した頂点のみが残るようなグラフである。連結2因子であるハミルトンサイクルは、支配的サイクルの特別な(グラフからサイクルを取り除いたときに残る孤立点が無い)サイクルである。14年度、Twente大学のBroersma博士らとの共同研究を行った結果、二部グラフの一般化である三角形フリーなグラフにおける、支配的な最長サイクルの存在を保証するOre型の条件の下限σを示すことに成功した(その下限は、支配的サイクルの存在に対しても下限である)。 一般のグラフに対する同様の結果は、1980年にBondyによって支配的サイクルの存在に対するOre型の条件の下限が示されている。一般のグラフに対しては、全ての最長サイクルが支配的であると主張できる。しかし、二部グラフの一般化である三角形フリーなグラフに対して同様の主張がなりたつためには、AshとJacksonの例より、下限σでは不十分であることがわかる。15年度は、三角形フリーなグラフにおいてその主張が成り立つためのOre型の条件の下限を示した。 Broersma博士らとの共同研究による成果と同様、実際にはさらに一般化したもの、すなわち一般のグラフに対して、その主張が成り立つための辺次数に関するOre型条件の下限を示した。またAshとJacksonの例からその下限が最良であることがわかる。 これら当研究者の二つの結果から、辺次数はグラフにおける支配的サイクルに対して、本質的な不変量であることがわかる。
|