支配的サイクルとは、グラフからそのサイクル上の頂点を取り除くと孤立点が残るサイクルである。支配的サイクルは、ハミルトンサイクルの一般化となっている。榎本らは、B0ndyの支配的サイクルに関する結果を拡張して、関連距離に関する主張を得た。関連距離とは、最長サイクルの長さと最長パスの長さの差である。本研究者はまず三角形自由なグラフの関連距離の研究を行い、最小次数が(|G|+2)/4以上ある三角形自由グラフGに対して、任意のパス上の高々1頂点をのぞいて、パス上のすべての頂点を通るサイクルが存在するか、または位数の小さい例外のグラフと同型であることを示した。この結果の系として、関連距離が1以下であることが容易にわかる。 さらにこの主張を使い、上と同じ条件の元、高々最小時数個の任意に指定された頂点に対して、それを通るサイクルの存在について示した。 上の榎本らの主張は、最小次数が(|G|+2)/3以上の2連結グラフの関連距離が1以下であることを主張している。本研究者は、この主張を一般化し、最小次数の条件を(|G|+3)/4に緩めた場合、関連距離が2以下であることを示した。この主張は、上の三角形自由グラフの場合と同様に、任意のパスに対して、高々隣接する2頂点をのぞいて、すべての頂点を通るサイクルが存在するか、またはそのグラフはハミルトンパスを持つことを示した。この結果は、SchierneyerとTewesの結果を改良している。この主張から、任意の指定された高々最小次数-1個の頂点に対して、それらを通るサイクルがあるか、ハミルトンパスを持つことがわかる。 線グラフの2因子についての研究は、そのハミルトン性の研究に関連して最近多くの研究者によって多彩な成果が得られている。一般に、線グラフはK3自由なグラフであり、2因子の存在についての結果も、K3自由なグラフに対するより一般的な結果として江川・大田によって示されている。この結果より、最小次数が3以上あるグラフの線グラフは2因子を持つことが容易にわかる。本研究者は、その2因子の連結成分の数の上限を与えた。すなわち、最小次数が3以上のグラフの線グラフは、高々(3|G|-2)/8個の連結成分からなる2因子を持つことを示した。一般に、最小次数が2以下になると、多くのグラフの線グラフが2因子を持たない。本研究者は、奇ブランチ・バンドと呼ばれるグラフの不変量が1以下ならば、上と同様の主張が成り立つことを示した。最小次数が3以上ならば、この不変量は自動的に1以下になる。この場合、上の連結成分の上限は、最良の値になる。
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