本研究の主題は、高次元ニュートン法における重根を、固定不定点として力学系の観点から調べることである。今年度は、高次元ニュートン法の具体例として全根同時反復解法を考え、その中で最も基本的な解法であるDurand-Kerner法について、従来知られている基本的な性質を、いわゆる収束解析の手法を使わずに数学解析および力学系の見地から再整理した。さらに、それらと同様の性質が、高次元チェビシェフ法の全根同時反復解法である田辺法についても成立つことを示した。 すなわち、Durand-Kerner法が、根と係数の関係を表す連立方程式にNewton法を適用したものであるという認識から出発し、多変数の重根に対するNewton法の基本的な性質を整理することを通して、反復で不変なDochevの超平面の存在、重根に対する近似値のバランス収束ならびに近似値の重心の高次収束、Aberthの初期値の安定性を導いた。また、田辺法が連立方程式に対するChebyshev法であることを利用して、同様の議論を田辺法にも適用した。 次に、バランス収束を持つ固定不定点として重根を力学的に特徴づけし、Durand-Kerner法(または田辺法)のアフィン共役性から多項式のアフィン同値が導かれることを示す。
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